⛩ やしろめぐりyashiromeguri
四肢を折って伏せる牛の像を、千代紙の文様で描いた図案

病気平癒

健康長寿・無病息災
健康

病気平癒(びょうきへいゆ)は、いま患っている病が癒えることを願う祈願です。手術を控えているとき、入院や療養が続くとき、ケガや病後の回復を願うときに受けられます。本人が床にあって参拝できないことの多い祈願でもあり、家族が代わりに受ける代理祈願を認めている社が多くあります。医薬の神として知られるのは少彦名命ですが、八幡宮・天満宮でも祈祷の項目に病気平癒を掲げる社は多くあります。なお、祈願は医療に代わるものではありません。治療については医療機関の判断に従ってください。

「平癒」とは——病が「平らかに癒える」こと

「平癒」は「へいゆ」と読みます。「平」は平らか、「癒」はいえるという意味で、二字あわせて病が穏やかに治ることを指します。古くからある言葉で、奈良時代の『続日本紀』養老元年(717年)の記事に「自余痼疾、咸皆平愈」という形で見え、『太平記』にも「呉王の病忽に平愈してげり」の用例があります。単独で「平癒する」とも使いますが、神社では祈祷の願いごとの種別(願意)の名として「病気平癒」の四字で掲げられるのが一般的です。癒えることを願う対象は病に限らず、居木神社(東京都品川区)のように「病気平癒・手術成功・怪我平癒」と並べて掲げる社もあります。

「平癒」と似た言葉——快癒・治癒・寛解との違い

快癒(かいゆ)
デジタル大辞泉は「病気や傷がすっかり治ること。全快。本復。」と説明します。意味は平癒とほぼ重なりますが、神社が願意の名として掲げるのは「平癒」のほうです。
治癒(ちゆ)
デジタル大辞泉は「病気やけがなどがなおること」と説明し、精選版日本国語大辞典は語釈そのものに「平癒」を挙げています。医療の場で使われることの多い語です。
寛解(かんかい)
デジタル大辞泉は「病気の症状が、一時的あるいは継続的に軽減した状態。または見かけ上消滅した状態」と説明します。治癒とは区別される医学の用語で、神社の祈願名として使われることはありません。
平復・全快・全治
精選版日本国語大辞典は「平癒」の語釈にこの三語を並べています。いずれも元の状態に戻ることを指し、平癒の言い換えにあたります。
無病息災・身体健勝
病にかからず健やかに過ごすこと、いまの健康を保つことを願うものです。町田天満宮は授与品の説明で、病気平癒を「現在の病気が治るようにと願う」もの、身体健勝を「現在の健康を保てるよう願う」ものと区別しています。

病気平癒の基本——読み・時期・代理での祈願

受けるときの目安です。時期の決まりはなく、必要になったときに受ける祈願で、本人が参れないことを前提にした案内を持つ社が多くあります。

読み方
びょうきへいゆ
「平癒」は「へいゆ」と読みます
主に祈願される時期
通年
時期の決まりはありません
よく見る授与品
病気平癒守・身代わり守
代理での祈願
家族が代わりに受けられる社が多い
本人が参拝できない場合の一般的な形です
併記されることの多い祈願
手術成功・怪我平癒
癒えることを願う対象を並べて掲げる社があります
快復したあと
御礼詣りを掲げる社がある
授与品は一年をめどに社へ納めるのが通例です

どんなときに願う祈願か

手術を控えているとき
居木神社(東京都品川区)は「病気平癒・手術成功・怪我平癒」をひとつの祈願として案内し、「病気・手術・怪我などに際し、身体の不調からの一日も早い回復を願う御祈願」と説明しています。
入院・療養が続くとき
本人が床にあって参拝できないことが多いため、家族が代わりに受ける代理祈願を認めている社が多くあります。授与された御守や神札を本人に届ける形が一般的です。
ケガや病後の回復を願うとき
「怪我平癒」を併記する社があります。平癒は「癒える」ことを指す語で、対象は病に限りません。
家族や友人のために願うとき
代理で申し込むときは、本人の氏名・生年月日・住所などを伝えます。伺う項目は社によって異なり、川越熊野神社は氏名・生年月日・住所・電話番号としています。
病名や信仰は問われない
川越熊野神社は「病気の種類や症状、祈願する人の信仰心に関わらず、どなたでも行うことができます」と案内しています。
快復したあと
「御礼詣り」を祈願種目に掲げる社があります(亀戸天神社)。授与された御守や神札は、居木神社が「一年経ちましたら神社にお納めください」と案内するように、一年をめどに社へ納めるのが通例です。

撫で牛——体の悪いところと同じ場所を撫でる

天満宮の境内には、四肢を折って伏せた牛の像が据えられています。臥牛(がぎゅう)、あるいは撫で牛と呼ばれ、自分の体の悪いところと同じ牛の場所を撫でて平癒を願う習わしが伝えられてきました。北野天満宮は「足に不調があれば足を撫で、手に不調があれば手を撫で治癒を願う」と説明しており、頭を撫でると知恵が付くとも言われます。同宮は牛社に祀られる臥牛を当宮で最も古いものと伝えており、遅くとも江戸時代には「一願成就のお牛さま」として親しまれていたと記しています。長く撫でられてきたため、頭部は少し欠け、体躯も丸みを帯びてきたといいます。牛が天神さまの神使とされる由来について、同宮は三つの説明を挙げています。菅原道真公が承和12年(845年)の乙丑(きのとうし)の年に生まれたこと。大宰府で亡くなる際に「人にひかせず牛の行くところにとどめよ」と遺言し、遺骸を運ぶ牛が座り込んだ地に葬られたと伝えること。そして神号「天満大自在天神」が、白い牛にまたがる姿で表されることです。臥牛の像は、牛を神使とする天神信仰にともなうものです。

病気平癒と結びつく神さま

医薬の神として記紀に語られる少彦名命が中心にいます。天神さまは神使の牛を撫でて平癒を願う習わしで結びつき、八幡さまは医薬の神ではなく、地域の鎮守として暮らしの願いを引き受けてきた側です。由緒の筋がそれぞれ違います。

少彦名命
大国主神とともに国造りを行い、人と家畜の病を治す方法を定めたと伝えられます。医薬の神として、薬種問屋の集まる大阪・道修町の少彦名神社などに祀られてきました。同社は江戸時代に大坂でコレラが流行した際、疫病除けの丸薬を調合して神前で祈祷し、あわせて「張子の虎」を配ったと伝わります。八幡・天神とは別系統の神です。
牛が神使とされ、天満宮の境内には臥牛の像(撫で牛)が据えられます。体の悪いところと同じ場所を撫でて平癒を願う習わしは、この結びつきによるものです。
医薬の神ではありませんが、多くの八幡宮が祈祷の項目に病気平癒を掲げています。地域の鎮守として暮らしにまつわる願いを広く引き受けてきたことによります。
掲載社のうち、このご利益を掲げる社に祀られている神

※ これは「このご利益を掲げる神社に、どの神が祀られているか」を数えたものです。神さまとご利益の因果を示すものではありません。

首を持ち上げて立つ張子の虎を、千代紙の文様で描いた図案
少彦名神社が疫病除けの祈祷とともに配ったと伝わる張子の虎の図案です。特定の社の授与品を写したものではありません。

病気平癒の神社

全国で名高い社

病気平癒で名の知られた社は三つの筋に分かれます。医薬の神を祀る社、撫で牛の伝わる天満宮、そして地域の鎮守として祈願項目に掲げる八幡宮です。

宇佐神宮八幡総本宮詳しく →
大分県宇佐市。祈願項目に病気平癒を掲げています。
筥崎宮三大八幡詳しく →
福岡市東区。病気平癒の祈願を専用の案内で受け付けています。
鶴岡八幡宮武家の守護神詳しく →
神奈川県鎌倉市。病気平癒守を授与しています。
大宮八幡宮武蔵国三大宮詳しく →
東京都杉並区。祈願項目に病気平癒を掲げています。境内の湧水は「多摩乃大宮水」と称されてきました。
亀戸天神社東の宰府詳しく →
東京都江東区。祈願種目に病気平癒を掲げ、体が一日も早く回復するよう祈る旨を案内しています。快復後の御礼詣りも種目にあります。
少彦名神社当サイト未掲載
大阪市中央区道修町。薬種問屋の集まる町に鎮座し、「神農さん」と呼ばれます。11月22日・23日に神農祭が行われます。
五條天神社当サイト未掲載
東京都台東区の上野公園内。医薬祖神を主神とし、あわせて天満宮でもあります。少彦名神社はこの社から分霊を勧請したと伝わります。
石切劔箭神社当サイト未掲載
大阪府東大阪市。「石切さん」と親しまれ、御加持御祈祷とお百度参りを受け付けています。
狭井神社当サイト未掲載
奈良県桜井市。大神神社の摂社で、同社は三輪の神の荒魂を祀り病気平癒の神として信仰が篤いと記しています。4月18日の鎮花祭は「薬まつり」の名でも知られます。

※ 全国的に知られた社を挙げています。当サイトに掲載済みの社にはリンクがあり、「当サイト未掲載」とあるものは今後の収集対象です。並びは知名度や格の順ではありません。

当サイトの掲載社(掲載132社のうち15社)

上に挙げた5社をのぞき、総本宮・社格・称号の順に10社を表示しています。

※ 並び順は旧社格(1946年に廃止された近代の格付け)と、総本宮・一宮などの称号にもとづくものです。格の高さがご利益の大きさを表すものではありません。

本人が参拝できないときは、家族が代わりに受けられます

病気平癒は、本人が床にあって参拝できないことの多い祈願です。家族が代わりに受ける代理祈願を認めている社が多く、申し込みの際に本人の氏名・生年月日・住所などを伝えます。伺う項目は社によって異なり、川越熊野神社は氏名・生年月日・住所・電話番号としています。授与された御守や神札は本人に届けるのが通例で、川越熊野神社は神札を「神棚に祀るか、身につけてお持ちください」と案内しています。身につけられない場合に、枕元や病室の清浄な場所へ置く形も行われています。郵送での祈祷申し込みを受け付ける社もあります。受付時間・初穂料・代理祈願の可否は社ごとに異なり、当サイトでは未確認の社が多くあります。参拝前に公式サイトでご確認ください。

病気平癒のよくある質問

「平癒」は何と読みますか?▾
「へいゆ」と読みます。「病気平癒」は「びょうきへいゆ」です。「平」は平らか、「癒」はいえるという意味で、二字あわせて病が穏やかに治ることを指します。
「平癒」と「快癒」「治癒」はどう違いますか?▾
意味はほぼ重なります。デジタル大辞泉は快癒を「病気や傷がすっかり治ること」、治癒を「病気やけがなどがなおること」と説明し、精選版日本国語大辞典は治癒の語釈に「平癒」を挙げています。神社が祈願の名として掲げるのは「平癒」のほうです。
「寛解」とは違うのですか?▾
違います。寛解はデジタル大辞泉が「病気の症状が、一時的あるいは継続的に軽減した状態。または見かけ上消滅した状態」と説明する医学の用語で、治癒とは区別されます。神社の祈願名として使われることはありません。
病気平癒と無病息災・身体健勝はどう違いますか?▾
いま患っている病が癒えることを願うのが病気平癒、病にかからず健やかに過ごすこと・いまの健康を保つことを願うのが無病息災や身体健勝です。町田天満宮は授与品の説明でこの二つを区別しており、社によっては申し込みの際に尋ねられます。
手術の前に受けてもよいですか?▾
「病気平癒・手術成功・怪我平癒」をひとつの祈願として案内している社があります。居木神社(東京都品川区)は「病気・手術・怪我などに際し、身体の不調からの一日も早い回復を願う御祈願」と説明しています。
本人が行けない場合はどうすればよいですか?▾
家族による代理祈願を受け付けている社が多くあります。申し込みの際に本人の氏名・生年月日・住所などを伝えるのが一般的で、伺う項目は社によって異なります。
お守りは本人が持つのですか?▾
本人に届けるのが通例です。身につけられない場合は枕元や病室の清浄な場所に置く形も行われています。神札を神棚に祀るか身につけて持つよう案内する社もあります。
撫で牛はどのように撫でるのですか?▾
自分の体の悪いところと同じ牛の場所を撫でて平癒を願う、と伝えられています。北野天満宮は「足に不調があれば足を撫で、手に不調があれば手を撫で治癒を願う」と説明しており、頭を撫でると知恵が付くとも言われます。臥牛の像は牛を神使とする天神信仰にともなうもので、天満宮の境内に見られます。
快復したあとはどうすればよいですか?▾
「御礼詣り」を祈願種目に掲げる社があります(亀戸天神社)。授与された御守や神札は一年をめどに社へ納めるのが通例で、居木神社は「一年経ちましたら神社にお納めください」と案内しています。
祈願を受ければ治療は必要ありませんか?▾
そうではありません。祈願は医療に代わるものではなく、治療については医療機関の判断に従ってください。
  • 祈願は医療行為ではありません。診断・治療については必ず医療機関にご相談ください。当サイトは治療上の効果を示すものではありません。
  • 少彦名命の医薬にまつわる伝承は記紀の記述にもとづくもので、史実としての年代は確定していません。
  • 牛が天神さまの神使とされる由来には諸説があり、ここに挙げたものは北野天満宮が示している説明です。
最終確認日:2026-08-27